多様な出版人、編集者を活かすことが業界の再生につながる

2008年4月、ロンドンブックフェアに参加したとき、ブースに立ち寄って話を聞くと、とても熱心なプレゼンテーションをもらった。「日本は世界有数のマーケットだから」だと。しかし内実を知らないであろう海外出版人達の過大評価に、かえって意気消沈してしまった。

単行本出版の内情は、96年の10,931億円(新刊点数63,054点、平均定価1,208円)をピークに07年は9,025億円(新刊点数77,417点、平均定価1,131円)と増えるのは新刊点数ばかり。1冊あたりの平均売上では96年が17,335千円で、07年は11,658千円と33%もダウンしている。しかし、売上が一直線に落ちてきたのかというと、ハリーポッターが出版された年には下落が反転している。

こういう状況を見るにつけ、業界で27年働いてきた者として考えるのは、企画力の減退である。単行本に限らず、雑誌が売上を落とし始めた97年以降、インターネット人口の伸張と書籍・雑誌売上の低下は反比例している。つまり、人々の関心は印刷された出版物から他のメディアに移っているということだ。

これを引き留めるのは、宣伝でも広告でもなく、企画である。関心が変貌しつつある読者の読字欲求に応えられるだけの企画が提供できているのか、と考えると、自社だけでなく業界人として忸怩たる思いがする。

しかし、それは出版編集者達だけの問題だろうか。よいコンテンツをもっている著者が出版業界やそのビジネスモデル、流通機構に興味をもてなくなって他のメディアに流れていると言えないのだろうか。

私は出版業界の閉鎖的な流通機構をひとつの問題点ととらえている。出版流通は実質的には2大取次会社・トーハン、日本出版販売がまかなっている。出版社はこの2社にお願いして本を流していただかないと全国流通は実現できない。出版の「言論の自由」は実際には、この2社により保証されている。ところが、この2社の取引口座を取得するのは至難の業で、当社は取得までに7年かかったし、いまでも年間の新規取引開始は2,3社と聞く。一方で近年、出版社の廃業は開業社数の倍になっている(例:03年開業46社、廃業96社)。メーカーがどんどん辞めてゆく業界というのは、魅力的であるはずがないだろう。

こういう中にあって、業界に先駆けて当社で始めたのが「出版共同販売」という事業である。これは、トーハン、日販の流通口座がなくても、当社が仲介の流通窓口と営業代行をすることで、誰でも出版社を立ち上げられ、出版する書籍を全国流通させる機能を提供しようというものだ。これにより多様で、個性的な著者と企画者、編集者を発掘し、出版業界へ送りだしてゆきたい。

いまこそ、出版業界は大きく変わらなければならない。それには業界既存の出版人と編集者だけではなく、門戸を大きく開いて、さまざまな企画を受入れ、それらを取り込んでいく懐の深さと度量が必要だろう。

当出版共同販売をひとつの端緒として、出版業界がさまざまな企画者をどん欲に取り込み、吸収し、活躍させてゆく活力があれば、まだ再生のチャンスがあると信じている。